*** 「言葉の由来 辞典」  な行 ***

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  *** な ***

 ◆ なあなあ
 相手と適当に折り合いをつけて、いい加減に済ませること。なれあい。
 聞き手に念をおしたり誘いかけたりする際に用いる、なれなれしさを伴った感動詞「なあ」を重ねた言葉。 一方が「なあ」ともちかけ、相手も「なあ」と返す、歌舞伎の内緒話の場面から、適当に妥協して済ますことをさすようになったとされる。
 ◆ 内閣(ないかく)
 国家の行政権を担当する最高の合議機関。英語cabinetの訳語として、明治時代から用いられる。中国では、明・清時代の政務の最高機関を指す。
 もとは宮廷の奥深くにあって妻女のいる部屋の意味で、のちに宰相の官署をいうようになった。
 ◆ ないがしろ
 ないことのように軽んずること。また、そのさま。
 「無きが代(しろ)」が語源とされる。「き」がイ音便化して「ないがしろ」と変化した。 「代」とは、「身代金(みのしろきん)」などで使われるように、そのものの代わりとなるもの、それに相当するものの意。 すなわち、「ないがしろ」とは、ないに等しいという意味で、人を無いようなものとして扱うことから、人を軽んずる意味が生じた。
 ◆ 綯い交ぜ(ないまぜ)
 いろいろのものをまぜ合わせて一緒にすること。「虚実を―にして語る」
 もとは、色や材質の違う糸を綯って(より合わせて)、一本の糸や紐にすること。
 ◆ 永谷園(ながたにえん
 お茶漬け海苔・ふりかけ・味噌汁等を製造・販売する食品メーカー。
 社名は、江戸時代中期に山城国湯谷村(現京都府綴喜郡宇治田原町)で煎茶の製法を開発した「永谷宗七郎(のちの永谷宗円)」に由来する。
 ◆ 長丁場(ながちょうば)
 仕事などが一段落するのに時間が長くかかること。また、長く時間のかかる物事。
 「丁場」とは、昔の宿場から宿場までの距離のこと。「長丁場」とはその距離が長いという意味で、行くのに時間がかかることからいうもの。
 ◆ 長月(ながつき)
 旧暦9月の異名。
 秋も深まり、夜が長くなってくるころで、「夜長月(よながつき)」の略であるとする説が最も有力。 他に、「稲刈月(いねかりづき)」が「ねかづき」となり「ながつき」となったという説、「稲熟月(いねあがりづき)」が略されたものという説がある。
 ◆ 凪(なぎ)
 風がやみ、波が穏やかになること。
 穏やかになる、静まるという意味の「和(な)ぐ」の連用形の名詞化とされる。 また、水面がなぎ倒されたように平らになるという意味で、「薙(な)ぐ」の連用形の名詞化とする説もある。
 ◆ 情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)
 人に親切にしておけば、巡り巡って自分にもよい報いがくるということ。「情けをかけることは、その人のためにならない」と解釈するのは誤り。
 「人の為ならず」は、断定の助動詞「なり」の未然形「なら」に、打ち消しの助動詞「ず」がついたもので、「人の為ではない」という意味。 それが近年では、動詞「なる」に打ち消しの「ず」がついた語と解釈してしまい、「情けをかけることは人の為にならない」と誤解される場面が多くなってしまった。
 ◆ 薺(なずな)
 アラブナ科の越年草。春の七草の一つで、若葉は食用とされる。三味線草。ぺんぺん草。
 歴史的仮名遣いは「なづな」。古くから食用にされ、撫でたいほど可愛い花の意味で「なでな(撫菜)」、また、夏に枯れて無くなることから「なつな(夏無)」の転ともされる。 漢名から「薺」を当てて書く。
 ◆ 納豆(なっとう)
 蒸した大豆に納豆菌を加えて発酵させた食品。
 奈良時代に中国から伝わり、寺院で作られたことから、「納所(なっしょ)」の僧が作った豆の意で「納豆」という。 納所とは、寺院で出納事務をする所のこと。この納豆は大豆を煮るか蒸すかして麹(こうじ)菌をまぶし、塩水につけて発酵させたのに、取り出して乾燥させたもので、大徳寺納豆や浜納豆がよく知られる。 現在、たんに納豆といえば糸引き納豆を指すが、これは日本で作られたもので、安土桃山時代に茶人の千利休が馬屋の藁(わら)に落ちていた味噌豆にかびが生えているのみて思いついたとか、平安時代の武将・源義家の家来が東北征伐の折、豆が糸を引くのをみて考案したといった逸話が残る。
 ◆ 撫子(なでしこ)
 ナデシコ科の多年草。秋の七草の一つ。
 花が小さく可憐なところから、愛児のように撫(な)でいつくしむ花の意でこの名があるとされる。
 ◆ 七竈(ななかまど)
 バラ科の落葉高木。山地に自生し、秋に真っ赤に紅葉する。
 材は燃えにくく、七度かまどに入れても燃え残るということからこの名があるとされる。 また、木炭の高材料であることから、七日間かまどに入れて上質の炭が取れることを意味する炭焼きの言葉「七日竈(なのかかまど・なぬかかまど)」が略されて「ななかまど」となったとする説もある。
 ◆ 七つ道具(ななつどうぐ)
 仕事をする上で、大事なひとそろいの道具。また、現代では道具だけでなく、手法、思考法などについても用いることがある。
 もとは、昔の武士が戦場に行くときに身につけた、具足・刀・太刀・弓・矢・母衣(ほろ)・兜(かぶと)の7つの道具のことをいった。
 ◆ 名乗りを上げる
 自分の名前をいうこと。また、あることに参加する意志があることを表明すること。
 もとは、戦場で武士が戦う前に、儀礼として自分の名前や身分を大きな声で相手に告げることをいった。 正々堂々と戦うということを表明するほかに、誰と誰が戦ったのかはっきりさせ、討ち取ったときに自分の武勲であることを示すための行動でもあった。
 ◆ 海鼠(なまこ)
 ナマコ綱の棘皮(きょくひ)動物。グロテスクな格好だが、食用として珍重される。
 古くは単に「こ」といい、腸を取り茹でて干したものを「いりこ(炒りこ)」といったところから、生(なま)のものを「生のこ」の意で「なまこ」と呼ばれるようになったとされる。 また、再生力が強いことから「生き返るこ」の意で「なまこ」とする説もある。
 ◆ 成金(なりきん)
 急に金持ちになった人のこと。
 本来、将棋で駒が相手の陣地に入ると、裏返って金将と同じ働きになることを「成る」といい、その成った駒を「成金」という。成金の中でも、特に一番弱い歩が成ったものを「と金」といい、歩兵がいきなり金将になるところから、にわか長者にたとえられるようになった。 当初は、庶民や貧困層から富裕層に転じた人への賞賛の語として用いられていたが、現在では、にわかに富裕層になった者への皮肉や侮蔑のニュアンスで用いられる。
 ◆ 鳴り物入り(なりものいり)
 はでに騒ぎ立てること。
 「鳴り物」は邦楽で楽器の総称。歌舞伎では三味線以外の楽器のことをいい、太鼓や鉦(かね)、笛などの鳴り物を演奏してはやし立て、にぎやかな場面を演出したことから、景気をつけたり、大げさにふれまわったりする意に転じていったもの。
 ◆ 鳴門巻き(なるとまき)
 無着色の魚のすり身を使い、断面に模様があるかまぼこの一種。なると巻きとも書く。略称はなると、ナルト。
 小口切りにした断面が渦を巻いたように見えるところを、鳴門海峡の渦潮(うずしお)に見立てて名付けられたといわれている。
 ◆ 縄張り(なわばり)
 勢力範囲、領域、領分のこと。
 本来は土地に縄を張って、境界線を決めたり、そこが特別の区域であることを示すものだった。戦国時代には城や邸宅を建てるときに、敷地内に図面通りに縄を張り、建物の位置を示すことも合った。「縄張りを荒らす」「縄張り争い」のように、勢力範囲の意で用いられるようになったのは江戸時代に入ってから。
 ◆ 南蛮(なんばん)
 古代中国で、四方の異民族を東夷(とうい)、北狄(ほくてき)、西戎(せいじゅう)と蔑称したものの一つで、南方の民族に対して呼んだもの。
 日本では平安時代から用いられているが、中世末ごろからは東南アジアの地域をさすようになり、16世紀にはそこを植民地としていたポルトガル人やスペイン人、およびその本国の呼び方にもされた。 さらに「南蛮漬け」や「南蛮菓子」のように、東南アジア経由で入った異国風のものに対して用いられる言葉にもなった。
 ◆ 内緒(ないしょ)
 表向きにせず、内々にしておくこと。外部には隠しておくこと。秘密。
 内緒は、本来は仏教語で、「自らの心のうちで真理を悟るこの」の意のサンスクリット語Pratyaatma-adohigamanaの漢訳、「内証(ないしょう)」に基づく。「自内証」ともいう。 それが転じて、外からうかがい知ることができないということで、秘密あるいは秘密の事情をさす語として用いられるようになった。さらに、内輪のこと、家の中の暮らし向きなどの意にも用いる。 「内緒」と書くのは当て字。
 ◆ 嘆く(なげく)
 悲嘆にくれる。深く憤ること。
 古くはため息をつく意を表す語で、「なげき」は「なが(長)+いき(息)」が縮まったもので、その動詞形が「なげく」とされる。
 ◆ 梨のつぶて(なしのつぶて)
 手紙などで連絡しても、返事がまったくないこと。
 「梨」は同音の「無し」に掛けた語呂合わせ。「つぶて(礫)」は投げられた小石のことで、投げた小石が返ってこないこと。そこから、まったく音沙汰(音信)がないことの意を表すようになった。
 ◆ 菜種梅雨(なたねづゆ)
 おもに3月下旬から4月上旬にかけて降り続く春の長雨を梅雨になぞらえていう語。
 菜の花が咲くころに降る長雨であるところから、この名がついたもの。 花を催す雨という意味で「催花雨」(さいかう)とも呼ばれる。
 ◆ 生意気(なまいき)
 自分の年齢や能力を考えず、出すぎた言動をすること。また、そのさま。
 「生」は「生ぬるい」などの生と同じ接頭語で、不十分・中途半端の意を表す。「意気」は気立ての意で、ここから気性や身なりが洗練されていて色気のある意の「粋(いき)」に派生する。 したがって、「生意気」とは意気(粋)が中途半端な意で、粋がって得意になっている様子を表す。
 ◆ ならず者
 品行の悪い者。また、定職がなく、悪事をして歩きまわる者。ごろつき。
 「ならず」とは、「成る」に打ち消しの助動詞「ず」がついたもので、どうにもならない、ものにならないといった意味を表す。 このどうにもならずの意から、手に負えない者を「ならず者」と呼ぶようになったと考えられる。
 ◆ 南京錠(なんきんじょう)
 巾着(きんちゃく)の形をした錠前。日本には江戸時代初期には渡来していたとされる。
 「南京」は中国南部の都市の名前。近世において、外国由来のものや、珍しいものや小さいものには「南京」を冠することが多く、「南京錠」も同様で、外国から渡来した錠前の意で命名された。
 ◆ 汝(なんじ)
 二人称の代名詞。現代語では文語的・雅語的表現で用いられる。
 本来は「なむち(汝貴)」とされる。「な」はとくに目下や親しい者に向けられた二人称代名詞、「むち」は尊い者の意で、神名の下に付けるなどして使用された。 語形は「なむち」→「なむぢ」→「なんじ」と変化した。 当初は尊敬の意を含んでいたと考えられるが、早くに敬意は薄れたようで、対等かそれ以下の者に対して用いられるようになった。
 ◆ なかんずく
 中でも。とりわけ。就中。
 漢語「就中」を訓読した「なかにつく」が音変化して「なかんずく」になったもの。

  *** に ***

 ◆ 新嘗祭(にいなめさい)
 宮中行事の一つ。11月23日に天皇がその年の新穀を神に供え、自らも食して収穫を感謝する祭事。現在は勤労感謝の日として国民の祝日となっている。ちなみに、固定日の休日では最も長く続いている祝日。
 古くは「新嘗」の二字を「にひなめ」「にひなへ」「にはなひ」「にふなみ」などといった。その意味は「にひ(新穀)のあへ(餐)」を略したもので、新穀を神に供えると考えられている。「あへ(餐)」とはもてなしの意。
 ◆ 肉薄(にくはく)
 競争などで、すぐ近くまで追い迫ること。また、議論などで相手に厳しく詰め寄ること。
 「肉」は肉体のこと、「博」は迫る意で、もとは「肉迫」とも書き、本来は大勢が体が触れ合うほど密集して前進し、敵に攻め寄る様を表した。 それが転じて、厳しく詰め寄る意となった。
 ◆ 錦の御旗(にしきのみはた)
 自分の主張や言動を正当化し、権威付けるための名目のこと。
 もとは、赤の錦地に日と月を金銀で刺繍したりした旗のことで、承久の乱の際に後鳥羽上皇が官軍に賜ったのが最初といわれている。明治維新の際、官軍が旗印としたことから転じていうもの。
 ◆ 二束三文(にそくさんもん)
 数が多くても、値段が安くて価値がないこと。
 「文」は昔の貨幣単位で、「三文」は、わずかなお金という意味。二束(ふたたば)でも三文にしかならないというのが語源。 また、「二束」は「二足」とも書くが、一説には江戸時代にわらで編んだ大きくて丈夫な金剛草履が、二足で三文だったからといわれている。
 ◆ 二足の草鞋を履く(にそくのわらじをはく)
 同じ人が二つの職業や立場を兼ねること。
 もとは江戸時代に、博打打ちが十手を預かって、自分たちを取り締まる役目の岡っ引きを兼ねることをいった。 博打打ちと岡っ引きではまったく逆の立場であることから、本来は両立しえない二種類の仕事をすることをいったが、のちに、単に二つの職業や立場を兼ねる意味で用いられるようになった。
 ◆ 二進も三進もいかない(にっちもさっちもいかない)
 行き詰って、どうにも身動きがとれない状態。
 「にっち」「さっち」は、そろばん用語で「二進」「三進」が変化したもの。「二進」とは2割る2、「三進」とは3割る3のことで、ともに割り切れ、商に1が立って計算が出来ることを意味していた。それがうまくいかないということで、金銭的にやりくりがつかない、商売がうまくいかないという意味で用いられるようになり、のちに、身動きがとれない意味へと変化した。
 ◆ 二刀流(にとうりゅう)
 同時に2つのことを行うこと。相反する嗜好を持ち合わせること。
 本来は、剣術で、左右の手に長短の刀を持って闘うことで、「両刀使い」ともいう。左右両方の手それぞれが武器を扱うことから、2つの異なる手段をもって事にあたること、あるいは同時に2つのことを行うことを意味するようにもなった。
 ◆ 二の足を踏む(にのあしをふむ)
 どうしようかと迷う。ためらうこと。
 「二の足」とは、歩き出して二歩目のこと。 つまり「二の足を踏む」とは、一歩踏み出して、二歩目はどうしようかとためらってその場で足踏みしてしまうこと。そこから、思い切って行動することができないの意を表すようになった。
 ◆ 二の句が継げない
 あきれはてて、次の言葉がでないこと。
 「二の句」は、雅楽の朗詠で、詩句を3段に分けて詠うときの2段目の句のこと。1段目は一の句、3段目は三の句といい、各句ごとに独唱してから続けて合唱に入る。 二の句は高音のため、そのまま合唱を続けるのは容易ではないことから「二の句が継げない」と用いられるようになり、それから転じて、次の言葉がでない意味となった。
 ◆ 二の舞(にのまい)
 同じような失敗を繰り返すこと。
 もとは舞楽で、麻摩(あま)の舞のあと、咲面(わらいめん)と腫面(はれめん)をつけた舞人二人がこっけいな所作でそれをまねてする舞のこと。 そのまねがなかなかうまくいかなくて笑いを誘うことから、人のまねをして失敗する意味に転じたもの。
 ◆ 二番煎じ(にばんせんじ)
 前にあったことの模倣で新鮮味がなく、あまり価値がないこと。
 「煎じ」とは、茶や薬を煮詰めて、成分を取り出すこと。 「二番煎じ」は、一度煎じた茶や薬をもう一度煎じたもので、一度目に比べて成分が弱く価値が低くなる。そこから、前にあったことの繰り返しで、新味のないもののたとえとなった。
 ◆ にべもない
 愛想や愛嬌がない。思いやりがなく、そっけない。
 「にべ」とは「にべにかわ(鰾膠)」の略で、海水魚ニベの浮き袋から作るにかわのこと。鰾膠は粘着力が強いことから、転じて、他人対して示す愛想、愛嬌の意となった。 多くの場合、「にべもなく断られた」のように否定の形は意味合いで用いられる。
 ◆ にやける
 男が女のように色っぽい姿や様子をする。また、きざっぽく浮ついている。
 古くは、貴人のそばにいて男色の対象になった少年、また、男が色めいた姿をすることを「にやけ(若気)」といい、それが動詞化してできた言葉。
 ◆ 女房(にょうぼう)
 妻のこと。
 「房」は部屋の意。平安時代には、宮中に仕える女官の部屋のことをいい、のちにその部屋にひとり住まいする高位の女官を指していうようになった。妻の意で用いられるようになったのは鎌倉時代以降である。
 ◆ 虹(にじ)
 雨上がりに、太陽と反対方向の地表から空にかけて現れる7色の帯。空中の水滴によって太陽光が分散されて生じる。
 「にじ」の正確な語源は不明だが、蛇と結びつける説が有力とされる。 漢字の「虹」は虫編がついていることからわかるように、古代中国で大空を貫く大蛇に見立てたことからできた字。雌雄があり、「虹(こう)」は雄で明るい主虹、「?(げい)」が雌で外側の薄い副虹とされる。日本でも古くから蛇に見立て、中世以降も、蛇が息を吹いたものが虹となるという考えが広く見られた。 琉球方言では、蛇を「なぎ」「なが」、虹を「のぎ」などと呼ぶという。このことから、蛇類の総称と推定される「なぎ」が「にじ」の語源として考えられるとする説もある。

  *** ぬ ***

 ◆ 濡れ衣(ぬれぎぬ)
 無実の罪のこと。人に無実の罪を背負わせることを「濡れ衣を着せる」という。
 一説に、継母が先妻の娘の美しさを妬んで、娘が若い漁師と忍び会っているように見せかけるために、漁師の濡れた着物を娘の寝ている所においたところ、父親がそれを見て烈火のごとく怒り、娘を殺してしまったという故事によるとされる。
 ◆ ぬか喜び
 あてがはずれて、あとでがっくりするような一時的な喜び。糠喜び。
 米を精製する時に出来る「糠」は、その形から細かい、とかちっぽけなといった意味で用いられるようになり、さらに「はかないもの」という意味になり、さらに、一瞬の短い間の喜びをそのように表現するようになった。
 ◆ ぬかずく
 ひたいを地につけて拝礼すること。また、ひたいが地につくほどに丁寧にお辞儀をすること。
 「額(ぬか)+突く(つく)」の語構成で、古くは「ぬかつく」と清音であったとされる。 「ぬか」は「ひたい」と同義語だが、単独で使われることは少なかった。「つく」はひたいを地面に突き当てるという意味。 漢字では「額突く」と書くが、読み方の表記は現代では「ぬかずく」が一般的となっている。
 ◆ ぬた
 膾(なます)の一種、饅膾(ぬたなます)の略称。現代では、魚介類や野菜を酢味噌で和えた料理を言う。
 「ぬた」は沼田からきた言葉で、味噌のどろりとした見た目が沼田を連想させることからこの名がついた。 室町時代からみられ、当時はぬるぬしたもので和えたものをすねて「ぬた」と呼ばれていた。
 ◆ 盗人萩(ぬすびとはぎ)
 マメ科の多年草。ひっつき虫のひとつ。林縁や路傍、草地などに生育する。
 古来の泥棒は、室内に侵入するとき、足音を立てないように足の裏の外側を使って歩くとされ、その足跡の形が、平たい半月形を2個つけた果実の形に似ていることから命名されたといわれる。 また、果実表面にかぎ状の細かい毛があり、それが気づかないうちに服につくのが盗人のようだからとする説もある。

  *** ね ***

 ◆ ネタ
 新聞・雑誌・話芸などの材料。犯罪の証拠。手品などの仕掛け。また、「寿司ネタ」など料理の材料の意にも用いる。
 「たね(種)」を逆さにした言葉。
 ◆ 根掘り葉掘り(ねほりはほり)
 しつこくこまごまと穿鑿(せんさく)するさま。
 移植などで、木の根をていねいに全部掘り起こす様子からたとえていう。 「葉掘り」は「根掘り」との語呂合わせで、根から葉にいたるまで、何から何までの意味合いを込めていう。
 ◆ 根回し(ねまわし)
 交渉事などがうまくいくように、前もって関係者に話を通しておくこと。
 もとは造園用語。大木を移植する際に、1・2年前からその木の周囲を掘り、広がった根を切り詰めて最根の発達を促し、移植後うまく根付くようにすることをいう。
 ◆ 年貢の納め時(ねんぐのおさめどき)
 悪事を働いていた者が捕まって、刑に服する時期のこと。また、それまで遊び回っていた者が結婚して身を固めるときなど、あることに決心して観念する時期のことも言う。
 もとは、滞納していた年貢を納めなければならない時期のことで、年貢は否応なく徴収されることからたとえていう。
 ◆ 涅槃(ねはん)
 仏教で理想とされる、一切の迷いや苦しみから解放された、不生不滅の悟りの境地。また、釈迦の死、入滅をいう。
 サンスクリット語nirv??aの音訳で、吹き消すこと、消滅、迷いの世界へ行かないことなどを意味するとされる。 のちには、煩悩(迷い)の火が消えて、すがすがしい心身の状態になった境地をいうようになった。
 ◆ 猫に小判
 いくら値打ちのあるものでも、その価値のわからない者に与えるのは無駄であることのたとえ。また、効果や反応がないことのたとえにもいう。
 人間にとっては貴重な小判も、猫に与えても猫にはその価値がわからないので、まったくに無駄であることから、どんな立派なものでも、価値がわからない者にとっては、何の値打ちもないものであるというたとえでいうようになった。 同義句は「豚に真珠」。
 ◆ ねこばば
 悪事を隠して知らん顔をすること。また、金品などを不当に自分の物にすること。
 ねこばばの語源は、「ねこ(猫)+ばば(糞)」とされる。 猫が糞をした後に砂をかけてそれ隠すことから喩えたもの。「糞(ばば)」は、大便など汚いものをさす幼児語。
 ◆ ねじ
 円筒や円錐の面に沿って螺旋(らせん)状の溝が刻んである固着具のこと。他にも、ぜんまいやぜんまいを巻く装置もねじと呼ばれる。
 上一段動詞「ねじる(捩じる・捻じる)」の連用形が名詞化したもの。 片仮名でネジと表記したり、ねじが螺旋状であるため、漢字では「螺子」と書かれたり、「捩じる・捻じる」から「捩子」「捻子」とも表記される。
 ◆ ねぶた
 東北地方の七夕行事の一つで、紙張りの扇や人形などに火を灯して屋台や車に載せ練り歩く。ねぶた祭り。弘前市では「ねぷた」と呼ばれるところが多い。
 「眠い」という意味の形容詞「眠たし(ねむたし)」の語幹に由来する説が有力で、かつて地方で見られた「眠り流し」の行事が発展したものといわれる。 眠り流しの行事は、七夕に木の枝やわら人形を海や川に流すもので、秋の収穫期を前に、労働を妨げる睡魔を払う意味があったとされる。 他にも、「合歓木(ねむのき、ねぶたのき、ねぶた)」「七夕(たなばた)」「荷札(にふだ)」などに由来する説もある。
 ◆ 懇ろ(ねんごろ)
 心のこもっているさま。手厚いさま。親しいさま。特に、男女が親密なさま。
 上代の「ねもころ」が「ねむころ」、さらに「ねんごろ」と変化したもの。本来は心をこめて思ったり、つぶさに見るさまをいった。 語源については、「ね(根)」+「もころ(如し)」か、「ね(根)」+「も(助詞)」+「ころ(凝)」と言われており、どちらも「根が絡み合う如く密に」という意味になるが、「ねんごろ」の語の意味の重点は「密に」の部分であるから、「凝る」が含まれる後者の説のが妥当であろう。
 ◆ 労う(ねぎらう)
 苦労や尽力に対して感謝し、いたわること。慰労すること。
 語源は奈良時代の上二段動詞「ねぐ(労ぐ)」で、神の心を和らげて加護を祈る意。また、相手の労苦をいたわる意であった。 そこから「ねぎ(禰宜・神職の一つ、神の御心を休める者の意)」、「ねぎらう(労う」、「ねがふ(願ふ)」などの語が生じた。
 ◆ 寝耳に水(ねみみにみず)
 不意の出来事や知らせにひどく驚くことのたとえ。「寝耳に水の入るが如し」ともいう。
 「寝耳に水」の「水」は水音の意で、寝ているときに出水や洪水などの濁流音が耳に飛び込んでくるような恐ろしい状態をいった。そこから、不意の出来事や知らせに驚くことをたとえていうようになった。
 ◆ ネーブル
 ダイダイの一品種。果肉は甘く、香りがよい。ブラジルの原産。
 「ネーブルオレンジ」の略で、「ネーブル(navel)」は「へそ」の意。球状の果実の頂にへそ状の突起があることにちなむ。
 ◆ 葱(ねぎ)
 ユリ科の多年草。野菜として栽培され、葉の白い部分を食べるものを根深ネギ、緑の部分を食べるものを葉ネギともいう。中央アジア原産。
 日本でも古くから栽培され、単に「き(葱)」と呼ばれた。 「ねぎ」と呼ばれるようになったのは中世以降のことで、根を食用にすることから「ねき(根葱)」の意とされる。
 ◆ 合歓木(ねむのき)
 マメ科の落葉高木。山野に自生し、庭木ともされる。夏の夕方、雄しべの長い、紅刷毛(べにはけ)のような淡紅色の花を咲かせる。ねぶのき。ねぶ。ねむ。ごうかん。ごうかんぼく。
 鳥の羽のような複葉が夜になると閉じて垂れるところが眠ったように見えることからこの名がある。 「合歓」と書くのは、男女の共寝を意味する漢名によるもの。
 ◆ ネグリジェ
 女性用のゆったりとしたワンピース型の寝間着・部屋着。
 語源はフランス語のnegligeで、「なおざりな・無視する・だらしない」などの意味をもつ。 だらしない服装という意味から、寝間着や部屋着のことをいうようになった
 ◆ 猫柳(ねこやなぎ)
 ヤナギ科の落葉低木。山地の川辺などに自生し、また観賞用に庭木とされる。他のヤナギ類の開花よりも一足早く花を咲かせることから、春の訪れを告げる植物とされる。
 銀白色の柔らかな毛に包まれた花穂が、猫の尻尾に似ていることからか、この名がある。
 ◆ ネック
 物事の進行を阻むもの。障害。
 ネックの語源は、英語のbottleneck(ボトルネック)で、日本語になったときにボトルが省略されたもの。ボトルネックは「びんの首」の意。びんの首は、狭くなっていて物事の進行を阻むことから、障害という意味が生じた。

  *** の ***

 ◆ 能書き(のうがき)
 自分を宣伝する文句のこと。
 ◆ ノーサイド
 ラグビーにおける試合終了のこと。
 英語のno sideからの外来語。 sideは、敵味方それぞれの側のこと。したがってno sideとは、試合が終了したことによって敵陣も自陣もなくなった、試合が終われば敵味方という隔てもないという意味をこめて、試合終了をさす語である。 ラグビーは紳士のスポーツとされ、戦いのあとはお互いの健闘をたたえ合うという精神が尊重される。 今日ではラグビー以外でも、勝負事が終了した後に敵味方の団結を訴えようとして、「ノーサイドの精神で」などということもある。
 ◆ のさばる
 わがもの顔で振る舞う。ほしいままに伸び広がる。
 古くはゆったりとしている意を表す「のさ」という語があり、そこから、ゆったりとして周囲を顧みない様子から「横柄である」という意が派生した。 「のさばる」は、この「のさ」に。広がる意を表す「はる(張る)」がついて、江戸時代ごろに生まれた語である。
 ◆ 熨斗をつける(のしをつける)
 進物の品にのしをつける。転じて、喜んで進呈する意でも用いる。皮肉の意味を込めて用いることもある。
 「熨斗」は進物の品に添える飾り物で、中に細く切ったのし鮑(現在では紙で代用)を入れる。伸ばす意の動詞の「のす(伸す)」の連用形が名詞化した語。
 ◆ のたまう
 「言う」の尊敬語。おっしゃる。宣う。
 「宣る(のる)」に「たまふ(給ふ)」の付いた「のりたまふ」が音変化したもの。 動詞「宣る」は宣言する、告げる意の動詞として古くより用いられ、「名乗る」の「のる」もここからきている。 「給ふ」は尊敬の意を添える補助動詞。 「のたまう」は尊敬の動詞として古くより使われたが、現代語では、尊敬語としてではなく、からかい半分のふざけた言い方として用いられている。
 ◆ のっぴきならない
 避けることもしりぞくこともできず、動きがとれない。切羽詰まってどうしてもやらなければならない。
 「のっぴき」は、「のきひき(退き引き)」が音便化したもので、漢字で書くと「退っ引きならない」となる。 「のく」は避ける意。「ひく」は退くこと。それが「ならない」のであるから、避けることも退くこともできない意味となった。
 ◆ 喉(のど)
 口の中の奥の、食道と気管に通じる部分。
 古くは「のみど」と読まれていた。語構成は「のみ(飲み)」+「と」。「と」は出入口の意の「と(門・戸)」。 「のみど」が転じて「のんど」となり、さらに「のど」へと変化した。
 ◆ 喉仏(のどぼとけ)
 喉の中間にある甲状軟骨が突き出た部分。成年男子にはっきりみられることが多い。喉頭隆起(こうとうりゅうき)。
 形が座禅を組んでいる仏様に似ていることから喉仏と言われる。
 ◆ のべつ幕なし(のべつまくなし)
 絶え間なく続く様子。
 もとは芝居で、幕を引かずに、開けたままずっと芝居を続けることをいい、そこから転じたもの。「のべつ」は、絶えず・ひっきりなしに、の意味で、動詞「述べる」の連用形に助動詞「つ」がついたもの。
 ◆ ノミ行為
 競馬や競輪などで、主催者以外の者が胴元となり、馬券や車券を売買すること。法律で禁止されている。呑行為、のみ行為とも書く。
 本来は、証券売買の違法行為に由来する語。 証券会社が客から受け取った金を取引所に取り次がず自分で売買し、客には委託されたとおり取引したようにみせかけたことから転用したもの。 「のむ(呑む)」は懐に入れる意味があり、そこからさらに、自分の懐に「着服する」意味になった。
 ◆ 伸るか反るか のるかそるか
 成功するかどうかはわからないが、運を天に任せて、思い切ってやってみること。一か八か。
 もとは、矢作りの用語。 矢柄は細い竹で作るが、太さが均等でまっすぐでないと、思う方向に飛ばない。そこで、伐り出した竹を型にはめて矯正し、乾燥させるが、竹がまっすぐに伸びているか反ったままか、使い物になるかならないかは、型から取り出すまでわからない。そこから、一か八かの意味が生じたもの。 また一説には、博打の用語で、勝つか負けるかの意味で「乗るか逸(そ)るか」といったことからともされる。
 ◆ ノルディック競技
 スキー競技のうち、雪原や整地されたなだらかなコースを滑るクロスカントリー競技と、ジャンプ台から飛んで飛距離と飛型を競うジャンプ競技の2つを合わせた複合競技の総称。ノルディック種目。
 英語nordic eventsからの外来語。 nordicはフランス語のnordiqueが英語に入ったもので、「北欧人の」の意。eventsは競技種目のこと。 これらの競技は、ノルウェーなど北欧で誕生・発達したことから、このように呼ばれる。
 ◆ ノルマ(のるま)
 一定時間内に果たすよう個人や集団に割り当てられる労働の基準となる量。
 もとはロシア語のnorma。共産主義国で、達成すべき労働量・生産量をさした。日本には、第二次大戦後のシベリア抑留者が伝えた語とされる。
 ◆ 暖簾(のれん)
 店先あるいは部屋の境界に日よけや目隠しなどのために吊り下げる布のこと。商店の入り口などに営業中を示すため掲げられ、屋号・商号や家紋などが染め抜かれていることが多い。
 もとは禅宗の用語で、御簾(みす)の前にかけて防寒に用いられた垂れ幕、垂れ布のことをいい、「簾(すだれ)の隙間を覆い、暖をとる」というところから名付けられた。 暖簾は本来、「のんれん」と読んだが、これが転じて「のうれん」となり「のれん」に変化していった。
 ◆ のろけ
 自分の配偶者や恋人などとの仲を人前で得意になって話すこと。惚気。
 動詞「のろける」が名詞化したもの。 「のろける」の「のろ」は、形容詞「鈍(のろ)い」の「のろ」と同じ。「のろい」はもともと遅いという意だったが、近世になって、にぶいという意味も生じた。 さらに、異性に甘いという意味も生じ、この意味だけを表す動詞「のろける」が生じた。
 ◆ 狼煙(のろし)
 戦時、遠方の者に緊急連絡や合図を送るために、火を焚いて上げる煙のこと。
 「のろ」は野良、「し」は気、あるいは火の意。古く中国では、燃やすと風が吹いてもまっすぐに立ちのぼるという狼の糞を用いたことから「狼煙(ろうえん)」といい、表記はその漢語を当てたもの。 中世以後用いられる言葉で、それ以前は「とぶひ(烽火)」と言われていた。「のろし」に「烽火」を当てて書くこともある。
 ◆ のろま
 動作や頭の働きが鈍いこと。また、その人。
 形容詞「のろい(鈍い)」の語幹に、状態を表す接尾語の「ま」がついた語。「鈍間」は当て字。 また、浄瑠璃の幕間劇に使う道化の操り人形「野呂間(のろま)人形」の動きから、「人形」を略して「のろま」というようになったともいう。
 ◆ のんき
 性格や気分がのんびりとしていること。むとんちゃくなさま。
 漢字では「呑気」「暢気」とも表記するが、これらは当て字で、正しくは「暖気」。「のん(暖)」は唐音。 中国では「暖気」は「だんき」で、あたたかい気候を意味したが、日本では「のんき」と読んで気晴らしや遊山(ゆざん)をさしていた。 これが転じて、人の気性に関して用いられるようになったとされる。
 ◆ 祝詞(のりと)
 儀式など改まった場面で、神官が神前で唱える古体のことば。
 「のり」は「宣言する、言う」の動詞「のる」の名詞形で、「名のりをあげる」の「のり」と同じ。「と」については、所の意とする説、呪言の意とする説、モノの意とする説などがある。